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2012-09-29(土)

夢の山田

カテゴリー: - BlueMoon @ 13:32:14

それまでの話がひと段落したところで、私は思い切って聞いた。
「先生」
「はい」
「夢の話をしてもいいですか?」
「もちろん」

ちょっとわかりづらいかもしれないけど、と前置きをして私は話し始めた。

私の夢には時々「山田」が現れる。
現実の山田は特定の人だが、夢の山田は特定の人ではない。

顔を見ると、先生はだまってうなずいた。
私は説明を続ける。

現実の山田は小学校の時のクラスメイトだ。
二人とも同じ中学に進み、同じクラスになった。
そして偶然同じ部活に入った。
それだけのごく普通の友人だった。

山田は少し経ってから部活を辞めた。
うちの部は辞めたくても辞めさせてもらえない。
いま考えるとそんなはずはないのだが、みんなそう思っていた。
そんな中で辞めた山田は、一部の部員からいやがらせをされるようになったらしい。
私も部活を辞め、同じようにいやがらせをうけることになってそれを知る。

「でもあの時何となくかわいそうだなと思ったんです。」
「山田さんを?」
「いえ、いやがらせしている方を」

やっている人たちだってわかっている。それが八つ当たりだって。
おそらくそんな自分にもイヤな気持ちがしているのだ。
だから集団でいる時にしかいやがらせをしてこない。そのジレンマ。

「山田もそう思っていたのかもしれません。飄々としていたから。
自分には関わらない方がいいって言われてる感じもして。」

先生は私の顔をみて何か言いたそうにする。

「ああ、私も大丈夫です。
それに部活以外のところでかわいがってくれる先輩たちがいました。
一緒にカセットでアバとか聞いて。ダンシング・クイーンは先輩が好きで
一番聞いたかも。イッツ・マイ・パーティもよく聞いた気がする。」

先生はにっこり笑う。

そして、山田は転校した。いやがらせとは関係なく親の仕事の都合で。

「その後まったく会っていないし、いまどこにいるかも知らないんです。
なのに、夢の中のいろんな場面に時々出てくるんですよ。」

先生はまたうなずく。

会ってないからいまどんな風になっているかもわからないし、現実の山田は
女性ですが、夢の山田は男性の時もあるんです。
昨日なんか30代のサラリーマン男性でした。同期が死んで一緒に泣きました。
でも自分はああこれは山田だってわかるしその人は山田なんです。

私はそこまで話して少し黙った。果たして相手が理解してくれるかわからない。
なにしろ説明していても、自分でもよくわからないのだ。

「心の中にある解放されていない感情が山田さんという形で
でてくるのかもしれませんね。」

私は先生の顔を見る。

先生はちょっと考えて話しだす。

きっとあなたの心の中には、何かしらの後悔があるのでしょう。
それは山田さんに対してではないのかもしれない。
でもそれがたまたま夢の中で山田さんになって現れる。

あなたは山田さんに伝えられなかったことを伝えたり、謝ったり
感謝したりして山田さんを通して自分の心の中の後悔を1つずつ
昇華させていこうとしている。
それはあなた自身が成長しようとしているという事ではないかしら。

そこまで話すと先生は冷めてしまったハーブティーを一口飲んで言った。
山田さん、私の夢にもでてきてくれないかしらね。

「今度夢で会ったら頼んでおきます。」
そう答えて先生の夢には山田はどんな人になって現れるのだろうと
私は想像しておかしくなってくすくすと笑う。


2012-09-28(金)

かつサンド

カテゴリー: - BlueMoon @ 23:57:08

かつサンド

突然天からの啓示のようにその言葉は頭の中に現れた。
乗り換えの駅に電車が滑り込み、降りようと席を立った時だった。

かつサンド・・・か、うん悪くない。

そう思った俺はすばやくこの近辺のどこに店があったか考える。

かつサンドと言えばあそこしかない。
確か駅の地下街にあったはず。

記憶を頼りに地下街に入ると、ちゃんと店はあった。

気のよさそうなおばちゃんが、今日はハンバーグサンドと
ヒレかつサンドが50円引きですよと教えてくれる。

ありがとうおばちゃん。俺、ここのハンバーグは昔から大好きなんだ。
でも今日買うものは決まっているのだよ。

「かつサンド一つください」
そう言おうとしたところで見慣れないものを見つける。
あれ?こんなサンドあったっけ?説明を見るとかつ増量らしい。
ということで初志貫徹しつつ増量の方のかつサンドを手に入れる。

浮き足立ってうちに帰る途中、秋葉原の店のことを思い出していた。

秋葉原にこの店の本店はある。
うちの親父はオーディオやらパソコンやらが好きで、休みの日には
よく家族で秋葉原に出かけていた。
いま考えるとちょっと変な家族だ。

そんな時よくこの店のかつサンドを買っていたのだ。

その後はしばらく疎遠になっていたが、俺が就職した会社が
秋葉原だったので、よく彼女とこの店で食事をした。
俺にとっては懐かしい思い出の店なのだ。

「今日はビールだな。」
コンビニに立ち寄ってビールを買うことにする。

笑顔のかわいいレジの女の子からビールを受け取ると、コンビニをでて家に向かう。
かつサンドでこんなに幸せな気分になれるなんて俺もたいがい単純だなあ。
そう思いながら、かつサンドとビールの袋をぶら下げて月を眺めながら歩いた。


2012-09-25(火)

NRとfist-bump

カテゴリー: - BlueMoon @ 11:56:14

長かったプロジェクトも終わって、通いなれてしまったこの場所とも今日でお別れだ。

撤収作業も大方終わり、やれやれとゴミ袋を片手にうろうろしていると
部屋の奥に同期の山田を見つけた。

山田は一人でロッカーの中の荷物を片付けていた。

「おーい、ゴミは業者に頼んじゃうからだせるものはだしちゃってくれよ」
そう声をかけると、山田は「おう」と返事をして俺の顔をちらっと見た。

様子が変だな。そう思って近付いてみると片付けていたのはSの荷物だった。
Sも山田と同じ俺の同期だ。

Sはある日休暇を取った後、帰ってこなかった。
外出時に行き先を記入するホワイトボードにはNRと書いてあった。

NR
No Return。客先から社に戻らずに直帰するという意味だ。

俺たちが新人だったころ、先輩にこの言葉の意味を教えてもらい
よくふざけて、こんな会社もう戻ってこねえよ、辞めてやる!
NRだ!と言っては笑い転げていた。

NR
Sは何を思いそう書いたのだろう。

俺は山田の隣の床に座ると、そっと肩に触れた。

「あいつはやっぱり戻ってこなかった。死んだ奴は帰っちゃこない。
なあ山田。それでも俺たちは生きてかなきゃ駄目なんだ。
時にはふてぶてしいほどに笑ってな。」

「おう」
山田はそういうともくもくと片付けを再開した。

「なあ」
「ん?」
「もうすぐケリがつくからさ。今日飲みに行こうぜ」
そういうと山田は半分泣いているような無理に笑った顔で俺の顔を見た。

「いいけどさ、おまえその前に顔洗って来いよ」
そう答えて俺は右手のこぶしをあげた。

山田はちょっと笑って右手をあげ、俺たちはそっとこぶしを合わせた。


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